Hair Tips

ハサミで世界を変えた偉大な美容師 ヴィダル・サスーン

 

美容業界だけでなく60年代のファッションや文化に大きな影響を与え美容界の革命児であった、
ヴィダル サスーン氏が5月に84歳で他界しました。

ここで少し美容の流れをふりかえり、氏の偉業を紹介したいと思います。
いまわれわれがあたりまえのように、美容室でカットしてブローで仕上げ、お客様でもお手入れが出来る
ヘアスタイルを提供する美容室のやりかたは、ヴィダルサスーン氏が始めたことです。

それまでは、美容室に行ってパーマをかけてカーラーを巻いてセットするのがあたりまえで、
当時のヘアスタイルは自宅で自分では再現できないので、なるべくヘアスタイルをもたせるようにして、
美容室でシャンプーして、セットしていたので、美しいヘアスタイルを維持するには頻繁に美容室に行かなければなりませんでした。

当時、カットはまだパーマの為の補助的な技術で、長さを調節してセットしやすいようにしているだけだったようです。
サスーン氏も初めはそのような仕事をしていましたが、建築に興味があったサスーン氏は1920年代にドイツにあった
近代建築の学校バウハウスからインスピレーションを受けて美容の世界にもカットでデザイン的なヘアはできないものか模索し始めます。

数年もの間、試行錯誤をくりかえし、ようやく出来上がったヘアスタイルが1963年発表のナンシークワンと呼ばれる
シンプルなボブのヘアスタイルです。ただまっすぐにカットされたボブヘアではなく、後の後頭部が見事な丸みをおびたスタイルで
これまでのカット技術ではだせなかった形でした。
当時の人気女優ナンシークワンのロングヘアをバッサリ短くしてその日、急きょカメラマンを呼んで撮影されました。

その後も人気ファッションデザイナーのマリークワントのためにも数々の名作をカットしてそれらの斬新な作品は
ヴォーグをはじめ数々のファッション誌の表紙を飾りました。

その後のサスーン氏はアメリカニューヨークにわたり成功をおさめ美容界のビートルズとも言われます。
アメリカではヘアケア商品を開発して一般消費者向けにシャンプー等を販売。CM広告の効果もあり全米から世界へと
販売されて日本でも人気があり、ヘアケア商品名でヴィダル・サスーンの名前を知っている方も多いと思います。
このように美容室が開発してその名前で一般に売り出した商品もそれまではなかったことです。

またカット技術だけではなくヘアカラーの分野でも早くから、ヘアカラー専門のスタッフを養成して当時まだ珍しかったカラーリストが
ヘアカラーを担当していました。
60年代に出店した店の雰囲気も外側はガラス張りで、内装もモノトーンで統一され最近の最新の美容室とほとんど変わりません、
とても50年前とは思えないデザインで時代を先取りした美容室といえます。

このように今の美容業界の基礎を築いて時代をリードしていましたが、次第にトニー&ガイやパリのマニアティスなどの発表する
よりソフトで柔らかいヘアスタイルの人気が出て直線的でハードなイメージのスタイルが敬遠されていきます。
ヘアスタイルの流行も変化してきましたが、不思議なことに必ずシンプルなボブのスタイルはなくなる事はなく、
時代が変わっても時々流行します。
それらのカット技術にはサスーンの技法が今なお不可欠で、これからも決してなくなることはないでしょう。

6月14日のブログもご参照下さい。